トップ >

石窯パン ハル(旧ベーグル屋ハル):自家培養発酵種を使い「富士山溶岩窯」で高温短時間で焼いた伝統製法のパンは、皮は薄くパリッと、中はモッチリ!(長野県上田市)

更新: / 公開: 2013年10月7日 ( ※ 古い情報です ) / 文責:

上田市の海野町商店街の東寄りにある白壁にウッディなドアが映える瀟洒な外観のお店が「石窯パン ハル」さん。木を所々にあしらった店内も、明るくさわやかな印象です。2012年から、ここでベーグル専門店「ベーグル屋ハル」として営業されていましたが、2019年10月に昔ながらの製法でパンを焼くお店としてリニューアルオープンしました。

これまでも、モチモチとした食感ながら、舌ざわりはなめらかで、フワーッと小麦の香りが口の中に広がるベーグルがと〜っても美味しくて評判のお店でしたが、店主の春野仁宣さんが、あるパン店との感動的な出会いによって一念発起! 長野県産小麦100%、自家培養発酵種、富士山溶岩窯、植物性素材100%にこだわったパン作りを始める決意をしたのでした。看板メニューの「カンパーニュ」(小ハーフ460円)、「プレーンベーグル」(230円)、「ダブルベリーベーグル」(360円)は、皮はパリッと、中はモチモチ!  そして最近の一番人気で、マルシェなどでも評判なのが「あんバターサンド」(320円)! ん? でもハルさんは植物性素材100%、乳製品は使わないのでは!  そうです、使っていません。バターは「有機ココナツバター」なんです。また、毎年クリスマスの時期になると、バター・卵・白砂糖不使用の「シュトーレン」が登場します。
ところで、ハルさんの店休日は日・月曜日。でも、その日曜日には、手作り菓子の専門店が出張販売をするというお楽しみもあります。
◎オンラインショップもありますよ → コチラ

■パリッ、モチモチの秘密は「富士山溶岩窯」
新装オープン当初、早速に買い求めたパンを一口かじったときの衝撃は今でも忘れません。皮は本当にパリッ、カリッとしていて、中はモチモチしっとり。これまでも、口の中に広がる旨味が魅力だったのですが、この新しい食感が、その旨味を、さらに引き出してくれていました。
その秘密はというと、石窯の一種である「富士山溶岩窯」。それまでの工房に大きな窯がドーンと設置されたんです。まさに今回のリニューアルの最大のポイントが、この窯だったんですが、その存在感は圧倒的です。

パンは本来、薪を燃やして石窯を加熱し、その輻射熱で焼く薪窯によって作られていたので、当初は、その薪窯を検討したのですが、スペースや薪の確保などの問題を考慮して、ちょうど、その頃に出会った溶岩窯を選ぶことにしました。(春野さん)

薪窯には耐火レンガを使いますが、溶岩窯はオーブンの内側が溶岩プレートになっています。熱源は電気なのですが、溶岩には、おそらく耐火レンガ以上の蓄熱力があるとのこと。溶岩石を温めると発生する遠赤外線がパン生地に伝わって分子を振動させるので、250℃ほどの高温で焼いても、外側が焦げる前に内部まで焼き切ることができます。蒸気も入れて焼くので、焼くときに生地から失われる水分が最小限となり、まさに私が味わった表面はパリッと、中はしっとりとしたパンが焼き上がるのです。

■「自家培養発酵種」によるパン作り
ハルさんでは、4年ほど前から、レーズンの表皮に酵母菌と乳酸菌を採取して起こした酵母エキスに、毎日、小麦粉と水を与えて育てた「自家培養発酵種」を使ってパンを作っています。ん? 発酵種? よく聞く天然酵母とは違うの?

パンのルーツをたどると古代の昔、小麦粉を水でこねて焼いたもの、ちょうどカレーと一緒に食べるナンのような平べったいものでした。その後、「発酵」という現象で生地が膨らむことを知ることで今のパンの原型が生まれます。その方法は、果実や穀物に付着している酵母を、果汁や小麦粉生地、ライ麦粉生地などで培養を繰り返し、製パンが可能な二酸化炭素発生力を持ったパン種を作ります。酵母は、パン生地の中の糖を食べてアルコールと二酸化炭素に分解し、その二酸化炭素によってパン生地がふくらむのです。これがパンの伝統製法です。
この酵母から作られたパン種を、ある店では天然酵母と言い、ある店では自家製酵母と言っています。実は、イーストもこのパン種の1種なんです。そう、イーストは自然界にある酵母を人の手により純粋培養したもの。つまり、人工的に作り出した酵母ではないんです。だって、英語でイースト(yeast)=酵母のことなんですから。

あたかも人工の酵母があるかのように、その対立軸として「天然酵母」と呼ぶことに、ちょっと違和感を感じるんです。また、酵母は採取して培養することはできても、酵母自体を「自家製」で作ることはできないので、「自家製酵母」という表現も、厳密な表現ではないと考えています。(春野さん)

じゃ〜、どう言えばいいのかというと、酵母の採取からパン種を完成させ、継ぎ足して維持するところまで、すべての工程をベーカリー独自で行っている場合、「自家培養発酵種」と表現するのが良いとされ、欧米では「サワードゥ」と呼んでいるそうです。

■酵母菌と乳酸菌が旨味を引き出す
ハルさんの「自家培養発酵種」には、もちろん酵母が存在しています。その数、1g当たり約1千万個。なんですが、実は、それよりも多い約6億個の乳酸菌が生きているそうなんです(2019年の調査)。乳酸菌は小麦のタンパク質を食べてアミノ酸そのほか有機酸、ペプチドなどに分解します。パンの材料が小麦粉と水と塩だけなのにも関わらず、複雑な旨味や酸味などが生じるのは、酵母菌や乳酸菌といった微生物の働きのお陰なのだそう。
また、小麦をある程度分解してくれるおかげで、消化しやすいパンになるとも言われています。さらに、乳酸を生んで生地の酸性度を上げることで、雑菌が発生しにくい環境を作るのだそうです。
これらが、ハルさんが伝統製法を選択するいちばんの理由なのだとか。
日々、粉を足して使い続けて現在4~5年目。すっかり酵母と乳酸菌の数がバランスよく増え、安定したパン種になっているのだそうです。

■長野県産の小麦使用、植物性素材100%で無添加
ハルさんは、長野県産「ゆめかおり」という小麦を100%使用していますが、青木村の「㈱よしとも」さんが生産し、同村内の製粉所にて製粉した自然栽培小麦(無農薬・無肥料)もカンパーニュ用に仕入れています。地元産、特に無農薬・自然栽培・有機栽培の小麦を積極的に使用、徐々に増やすことにより、環境負荷の少ない農家さんを支援できたらと思っているそうです。
また、ハルさんが使っている食材は、植物性素材100%。卵・肉類はもちろん、バター・チーズ等の乳製品も使用していません。ん? でもチーズベーグルは? 実は、自家製豆乳ヨーグルトから作る乳不使用の「豆乳チーズ」なんです。また、自然界に存在しないもの(化学調味料、保存料、白砂糖、マーガリン等)は不使用(無添加)です。ドライフルーツ等は、可能な限り無農薬・有機栽培のものを使用しています。

■「ブーランジェリー・ドリアン」との出会い
店主の春野さんは、2018年の年末、広島市にあるパン店「ブーランジェリー・ドリアン」の代表・田村陽至さんの著書『捨てないパン屋』を読んで、店の在り方を見直す機会だと感じ、早速パンを取り寄せ試食したそうです。その美味しさとオブジェのような存在感に感動した春野さんは、2019年5月には田村氏を訪問。無駄のないオペレーションと薪窯の素晴らしさに圧倒されたそうです。そして今後は、極力地元の粉を使い、酵母と乳酸菌という微生物の力を借りた伝統製法に則り、パンを石窯で焼いていきたい、と心が決まりました。薪窯作りも検討したのですが、「富士山溶岩窯」に出会い、十分に美味しいパンが焼けると確信して導入したそうです。

■お隣のカフェでイートイン、日曜日には手作り菓子の専門店が出店
と〜っても美味しいハルさんのパン。きっと、その場ですぐに食べた〜い! って思うかも。でも、残念ながらハルさんにイートインスペースはないんです。でも、ご安心を! お隣に「犀の角」というカフェ&ゲストハウスを備えた文化施設があって、1ドリンクをオーダーすれば、ハルさんのパンを持ち込んで食べることができます!  さらに、ハルさんの営業が終了してからの18:00~22:00と、翌朝7:30~10:00まで、その日に焼いたパンが販売されます。

さて、ハルさんの定休日は日曜日です。でも、その日曜日に、実は、ちょっと、お楽しみがあります。そう、ハルさんが親しくしている手作り菓子のお店が出張販売するんです。
第一日曜日は、「しあわせおやつ。yukiiro」さん。卵、バター、乳製品など動物性の食材や白砂糖を使わないナチュラルで身体にやさしいお菓子です。焼き菓子やスコーン、生ケーキ、タルト、プリンなど季節の食材を使った10〜15種類が並びます。
第三日曜日は、「やさしいおやつ tielykke」さん。上白糖や乳製品は不使用で、地元の旬の野菜や果物をふんだんに使った優しい甘さの素朴なお菓子です。シフォンケーキだけは、平飼いでのびのび育った鶏の卵を使っています。ちなみにtielykkeは、デンマーク語でtie=結ぶ、lykke=幸せを意味するそうです。

お店からのヒトコト

東京都高田馬場で9年間ベーカリー&カフェ・レストランを経営し、2012年に上田市に移住して、「ベーグル屋ハル」を開店させました。澄んだ空気、美味しい水、豊富で新鮮な食材、身近に感じる大自然、そして人情味あふれる人達との出会いに感謝しております。
当店の商品コンセプトは「人の身体は食べる物から作られている」。人にも環境にも配慮して作られた材料を使い、アレルギーのお子様でも安心してお召し上がりいただける商品を、日々、手間暇を惜しまず作っております。(春野仁宣・里美)

webサイト https://ishigamapan-haru.com
電話番号 0268-75-0777
住所 〒386-0012 長野県上田市中央2-11-19グラスプ海野町Ⅱ号館1階A号室
営業時間 11:00~18:00(売切れ次第営業終了)
定休日 日・月曜日