トップ >

てしごとどうや:着物からリメイクした服飾品や小物の製作。天然素材の絹は冷え取りにも効果的。「かふぇどうや」オープン!(長野県東御市)

更新: / 公開: 2014年12月5日 / 文責:
《新型コロナ感染症対応》 新型コロナの感染拡大を防ぐため、「かふぇ どうや」さんは、しばらくの間お休みしています。 「1日も早く拡大が終息し、日常が戻ることを切に祈ります。 休業中に店内をリニューアル、パワーアップしたいと思いますのでお楽しみに!」(森尻さん)

東御市にある「かふぇどうや」さんにうかがいました。古い民家を利用した店内は、ネジ巻き式の柱時計が昭和レトロを醸し出していて、とっても落ち着きます。
ここは、「てしごと どうや」の森尻恵美さんが手がけているリサイクル着物&リメイク着物の相談・販売、循環農法&冷え取りについての情報発信をするアンテナショップで、美味しいお茶と自家製のお漬物をふるまってくれます。

出迎えてくれた森尻さんは着物姿。「何か今日は特別な日ですか?」と尋ねてみると、着物は日常なのだとか。なんと森尻さん、洋服や靴は、すべて処分していて、毎日、着物を着て過ごしているというんです。

なぜ森尻さんが、そんな着物生活を始めたかというと、きっかけは「冷え取り」。
“冷え”とは、頭より足の温度が低い状態を言い、それが慢性的に続くことを“冷え性”と呼ぶそうです。そして、この冷えの状態を改善することが「冷え取り」なのですが、“冷え”が取れると基礎体温が上がり、免疫力も上がるのだとか。

「冷え取りでは、熱を逃がさないように靴下やズボン下を重ね履きしますが、最適な素材は絹なんです。絹の元になる繭は、中にいる蚕の老廃物や二酸化炭素を外に出す機能があります。だから、絹を身に付けると、肌から汗や老廃物を吸い出してくれるので、着心地が良いんです」

と森尻さん。
こうして冷え取りを始めて5年たった頃、森尻さんは、化学繊維の衣服を着ると気持ちが悪いと感じるようになり、いつでも絹のような天然繊維を身に付けていたいと思うようになりました。そこに着物生活を始める原点があったのでした。
食べ物の安全についての関心は高くなっている昨今ですが、実は、肌に付ける素材も化学繊維から絹などの天然繊維に変えるだけで、体調が良くなる場合があるそうです。

「絹製品というと高いイメージがありますが、現在は、着物の古着が多く流通するようになり、取り寄せてみると意外と状態が良く綺麗なので、そのまま着ることだってできるんですよ」

これが、とっても着心地がいいそうなんですが、それもそのはず、昔の着物は質の良い絹で作られていたのですから。そんな上質の着物なのに、現在は着る人が少ないために安価で手に入るというわけです。
なので、多くの方に着物地の心地良さを味わってもらいたいと思うようになった森尻さん、着物そのものは、なかなか一般的には普及していないので、まずは、洋服へのリメイクを始めることにしました。着物の縫い目を解いて水洗いし、天日に干して乾かし、生乾きにアイロンをかけると、くすんでいた着物も、とてもきれいに生まれ変わるのだそうです。

ところで、一口に絹織物と言っても様々な種類があるそうです。混じりけのない絹織物を正絹(しょうけん)、ほかにお召(おめし)綸子(りんず)紋錦紗(もんきんしゃ)縮緬(ちりめん)銘仙(めいせん)紗(しゃ)絽(ろ)縮み (ちぢみ)など、春夏秋冬を快適に暮らすため、様々な性質の織物が生み出されていて、森尻さんは、その特徴を最大限に生かして、洋服にリメイクしているのです。

例えば、正絹の襦袢生地から作るズボン下は、着物の生地に伸縮性がない ので、ワイドに仕上げています(4,500円~)。また、絹、ウール、綿などから作るワイドパンツは、着物を着るように折りたたんで紐で縛るので、前出のワイドなズボン下の上にも履けます(4,500円~)。紬や縮緬などが素材のワンピースは、反物の幅のまま作ります(9,000円~)。ほかにも、羽織の生地をスカートにリメイクしたりします、
端切れも捨てることなく、つないで湯文字(女性の和服の下着)腰紐にしたり、つまみ細工などの小物(かんざしや帯留めなど)、シュシュや髪留めにしたりしています。

製品の販売は、「かふぇどうや」のほかに、ネットショップや近隣のマルシェなどへの出店で行っています。

ジャージ感覚で着られる着物。大正ロマンが新しい。

現代では、着物はハレの日に着るものになってしまって、普段着る習慣がなくなり、タンスの肥やしになって埋もれているそうです。日本人には「他人の着たお古なんて嫌だ」という感覚があり、一昔前までは、着物のリサイクルを考える人はいませんでしたが、最近は「着物を自由に着たい」という需要も高まってきて、少しずつ中古市場は温かくなってきてはいます。でも、買取価格が非常に安いため、まだ「高いお金を出して作った着物を手放すのは惜しい」という方が多いようです。このため隠れた在庫が多くあったせいか、森尻さんが着物生活を始めると、知人からいただいたりもして、手元に200着近い着物が集まったそうです。

身体に優しいということで、絹の肌着などを求める人も多いのですが、現在、絹の生産は国内ではほとんどありません。中国でも自国での消費が多くなっているうえに、実は蚕は農薬を使った桑は食べないだけに、土壌なども汚染されている中国では生産が減ってきているので、絹の値段は上がってきています。だからこそ、リメイクなのだそうです。

「リサイクルの着物は500円~1,000円、高くても5,000円程度。だったらジャージと変わりませんよね。それに着物は一反の生地がまるまる使われているのに比べてジャージは、解いてみても少しの生地しかありません(笑)。絹のウエディングドレスはものすごく高いのですが、リメイクならデザインにもよりますが30000円~。ご自分で縫うことが前提でしたら原材料費は5000円~です。 振袖もレンタルだと20万円、化繊の振袖でも10万円以上はしますが、リサイクルなら、立派な着物が15,000円、帯が10,000円、襦袢が1,800円ほどでそろうんですよ」

と森尻さん。

昔の着物は天然の染料で染められているので、今では出せない素敵な彩色を目にすることがあるそうです。そうそう、人気のあったNHK連続テレビ小説『花子とアン』でも話題だった平織りの絹織物「銘仙」は、染めた糸で柄を織りながら必要なところに色を付ける手法によって複雑な柄が多く、色合いも、ショッキングピンクあり、真っ青ありと、大胆でポップで個性的。実は、その大正ロマンが今、若い人の間でも流行しているとのことです。

着物は反物の幅(37cm)のまま、細い場所も切らずに畳んで作られていて、ここが洋服と大きく違うところです。小さい部品に裁断してつくる洋服の場合、現状より大きなサイズへのリメイクはありえないのですが、着物だとそれができるのです。訪問着をほどいて制作中のドレスを見せていただきましたが、絹独特の光沢も出て良い感じです。襦袢の生地でパニエもできちゃいます。絹の羽織の生地をスカートにしたり、お召というコシが強く着崩れしにくい絹織物を巻きスカートにしたり……。織物の持つ独特な雰囲気が素敵! もちろん絹なので履き心地も抜群です。

自分で縫いたいという方には型紙を公開しているそうです。リメイクを手伝ってくれる縫子さんも募集中!

天然素材で快適、そしてデトックス&身体ケア

実は森尻さん、「信州なずなの会」という、大分県の赤峰勝人さんが提唱している旬の作物をできるだけ自然な状態で育てる「循環農法」を実践しているグループに所属して、農業を営んでいるんです。そして、そして、そうなんです。森尻さん、その農作業も着物! 春から夏にかけては藍染の野良着、秋から冬は着物に袴で田んぼや畑に出向いて作業をし、トラクターにも乗るんです。だから、目立つ目立つ。道行く人が思わず立ち止まって見ていくそうです。

「綿の野良着は、ベタベタ汗ばんだりしませんが、下に絹の肌着をつけます。同じ自然素材でも、綿や麻などの植物繊維は、吸収した水分をすぐに放出すると死んでしまうという植物本来の性質上、体内に水を保持しようとします。だから汗を吸収すると濡れたまま、なかなか乾かないんです。その点で動物性の絹やウールは、吸った水分を外に出す性質があるのでサラッとしているんですね」

と森尻さん。
それは、靴下の重ね履きでも同じです。

このように絹は、夏は涼しくて、冬は暖かく気持ちがいいのですが、それだけでなく、健康にも良いのだそうです。なぜなら、肌は排毒器官だから。排出されるはずの老廃物が化学繊維の肌着やストッキングなどで抑えられると、内臓に逆戻りしてしまい、その状態を慢性的に続けているだけで、実は具合が悪くなってしまうのです。食べ物だけでなく、着るものに気をつけることで、デトックス&身体をケアして体調も良くなってくるとのことでした。

「20代後半から、肌がカサカサしたり吹き出物が出ることもありましたが、着物にしてから調子が良くなったんですよ。お風呂に入ったときに石鹸で顔を洗うだけで、何もつけていないんですけどね。こんな風に天然素材の心地良さを実感することで、化学物質が蔓延している社会環境のことにも興味を持っていただいて、そこから新しい生き方を探ってもらえたらとも思うんです」

と森尻さん。
確かに、森尻さんの肌ってツヤツヤしていて綺麗です。

お話を聞いていると、確かに天然素材の衣服を身に着けてみたいとは思うのですが、その手入れが大変だということなんですが……、

「いや、それほどでもないですよ。絹は水の中で振り洗いされるのを嫌がるので、手で押し洗いするのが一番ですが、洗濯機でも洗えます。ドライモードを使い、脱水を少しだけかけます。ほとんどのものは天日に干しても大丈夫です。入浴のついでに、さっと手洗いという癖をつければお手入れもあまり苦にならないと思いますよ」

と森尻さんの言葉に安心しました。

普段着なら5分で着付け。洋服感覚の着物

着物って、「ちゃんと着なきゃいけない」という意識があるので、「簡単に着られない」とか「着付けにすごく時間がかかる」なんてイメージばかりが先行してしまいます。だから、なかなか親しんで着るということにはならないんですよ。そんな疑問をぶつけると森尻さんは、

「お祝い事などのハレノヒの着物はしっかり着付けをしますが、普段の着物はそんなことはないですよ。ちょっと変でも大丈夫! そう考えれば5分ぐらいで着られます。正装でなければ、お太鼓でも15分くらいあればOK。忙しい朝は普段着モードで着付けをして、お出かけとなったら、よそいきに着替えるんです。洋服の感覚と同じですね」

最初は、お正月やお宮参り、七五三、お子さんの入学・卒業などの折に着物を着て、だんだん回数を増やして欲しいそうです。着物選びのアドバイスや、簡単な着方を教えてもらえるとのことですよ。

「着物は、年相応のお洒落もあれば、年を取ってから派手な色が着られたり、派手な着物でも帯や小物をシックに着たりと、とても楽しいものです。みんなでどんどん着物を着ましょう。例えば、カフェで着物を着てのお茶会とか、着物を着て映画の鑑賞会とか……」

実は、やっぱり森尻さん、今とっても目立つので、着物を着る人が増えて欲しいそうです。

ちょっと、ここで、紬にちなんだ豆知識を一つ。

絹は、基本的には繭玉から1本の糸を引き出します。蚕が出てしまったりして使いものにならない、俗に言う“くず繭”、2匹の蚕が一つの繭を作って1本の糸がキレイに出せない“玉繭”は、繭をお湯につけて柔らかくします。これが真綿です。そこから糸を引いて紡いでよっていくのが紬糸。その糸で織ったのが紬です。精錬された糸よりも太くてゴツゴツして節が出るので、紬は光沢が抑えられてツルツルしておらず、ボコボコしているから触った感じが暖かいのです。紬は全国で生産されていて、奄美大島の紡ぎはシャリッとしていて涼しいのですが、東北の紡ぎはホッコラ暖かいというように、一口に紬と言ってもいろいろあるのだそうです。

半身浴は疲れを癒すリラックスタイム

話にあった冷え取りの基本が「半身浴」なのだそうです。ぬるめのお湯にミゾオチより下を沈め、じっくりと熱を入れていきます。20分たって体が温まると、体のあらゆるところにたまった老廃物が血液によって運ばれ、お湯につかっている皮膚や粘膜から体外へ出始めます。だから、できれば30分以上は入るのが良く、森さんなどは2時間ほど入ることもあるのだとか。

そして、お風呂から出たあとは、芯まで温まった身体から熱が逃げないように靴下やズボン下を重ね履きします。こうすることで半身浴効果を一日中得ることができるのだそうです。普段、森尻さんは絹ウール絹ウール綿の5枚の靴下を重ね履きしていますが、中には十何枚も履いている人もいるのだとか。

早速、取材にうかがった日の夜から、半身浴を始めることにしました。40度ほどのお湯にみぞおちから上を出して5分くらいたつと、不思議なことにお湯から出ている上半身も体の中から温かくなってきたんです。初日は15分であがってしまいましたが、そのあとかなり長い時間、温かさが続いているのを実感しました。浴室内の温度が上がらないように窓をあけて蒸気を逃がしたり、お風呂の蓋も使ったりすると、室内の湿気はあまり気になりません。翌日からは本を持ち込んでみたところ、あっという間に30分が過ぎ、まさにリラックスタイムでした。

その日はだいぶ疲れていたんですが、半身浴をした次の日、すっごく身体が楽になったのを実感しました。
お風呂から出たあと、森尻さんからサンプルとしていただいてきた絹のズボン下を試着してみました。絹は肌触りがヒンヤリしているイメージがあったのですが、実際に着てみるとそんなことはなく、むしろ、汗をかいてもべたつかないので、サラッとした感触が何とも言えず心地良かったです。

お店からのヒトコト

今も昔も着物は、1か月のお給料で買えるかどうかというお値段です。蚕を育て繭から糸を引き、布地を織って手で縫うという作業を経てできあがるものですから、相応の値段だと思います。今の洋服はどうでしょうか。完成までの労力に見合った価格がついているでしょうか。農作物もそうですが、今は「ものの価値」と「価格」のバランスが崩れているものが多いと感じます。消費者の皆さんがうれしく思う陰で、どこかで哀しんでいる人がいるのではないでしょうか。「てしごと どうや」も現在は埋没している着物を有効利用することで、手に取り易い価格の商品作りを心がけておりますが、ゆくゆくは素材から手作りされている方や伝統の織元から正当な値段で素材を仕入れ、長く大事に着るものを作るという方向につなげていけたらいいなと思っています。

森尻恵美

住所 東御市祢津1295
営業時間 土、日、祝日 13:00~17:00午後1時~5時
※平日は予約営業なので事前に電話かメール
webサイト http://www.douya.jp
eMail email hidden; JavaScript is required
電話番号 090-4390-6466
FAX 0267-23-3868