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東ティモール 残る文化

更新: / 公開: 2016年6月9日 / 執筆:

東ティモールに降り立つと独りよがりだろうが、歓迎されている気がした。
私は敏感な方でもなければ、第六感が鋭い訳でも無い。
しかし、東ティモールとは何か特別なご縁がある様な気がしてならなかった。
ある老人に「日本人か、また来たな」と言われた。私はそれが第二次世界大戦の事、ティモール問題で日本が悪く関わった事を言っているのだと感じた。
どう答えて良いのか戸惑った、次の瞬間その老人は笑いながら「昔の事だ、もう忘れたよ」と私の肩を叩いた。
この考えが世界を包めば良いのにと感じた。
日本が東ティモールにした事は、恥ずべき行為であり、忘れてはならない。しかし、東ティモール問題に日本がどの様に関わったかを知る人は殆どいない。ましてや、第二次世界大戦で日本が3年半掌握していた事など知る由もない。
この感覚は逆にならないと良くない。加害者はすぐに忘れ同じ事を繰り返す。今の日本は正にそうだ。
受験の為に歴史を勉強するのではない、同じ事を繰り返さない為に勉強するのだ。人類の歴史がもし本当に輝かしく素敵だったとしたら、今ほど勉強しなくとも良いのかも知れない。私達の知る歴史は悲惨な事が多すぎる。それをしっかり学び、過ちを繰り返さない様にしたい。
私は下の写真に「残る文化」と言う題を付けている。
権力は人の心までは奪えない。

東ティモールの文化は破壊し尽くされたと言われた。ティモールの人々は自分達の踊りを踊る事も、歌う事も自分達の言葉を話す事も自殺行為とされた。歌や踊りが特別な力を持っていたのだ。その為、歌う事踊る事は逮捕の原因とされ、行方不明(殺され)になってしまった。
文化は破壊し尽くされたと言われる中で、独立を迎えたティモールの人々は自分達の踊りを踊り狂い、歌った。生きるか死ぬかの極限状態の中で歌い続け踊り続けたのだ。
私はご縁があり、東ティモールと関わり、色々を知った。知ったからにはそのままではいられない。たまたま私は写真を撮っていた。たいそうな事は出来ないが、せめて写真を見て頂き、同じ過ちを繰り返さない様、何があったかを伝えて行きたい。
そして何よりティモールの方々の格好良い姿、生きている表情を見て頂きたい。
また投稿させて下さい。

権力は人の心までは奪えない。


コラムニストのプロフィール :

東ティモール独立に立ち会い写真を始める。 その後もフィリピン、ネパール等で撮影を続け、写真を通して、資源をめぐる紛争やグローバル化の中で起きる格差の問題など、社会の影を訴えつつ、奪われることのない人々の持つパワーや力あふれる姿、残り続ける文化や暮らしをフィルムに収めている。9年前に名古屋から信州に移住。3児の父。


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