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【信州移住体験談】八ヶ岳の麓、原村に東京から移住した、登山愛好家Kさんご夫妻に聞きました。

更新: / 公開: 2014年1月7日 ( ※ 古い情報です ) / 文責:

「富士見のおばあちゃんが『カマキリが高いところに卵を産み付けているから、今年は雪が多いかもしれない』と教えてくれました。」

今回、お話を聞かせて頂いたのは、八ヶ岳の麓、長野県諏訪郡原村で暮らすKさんご夫妻。2008年に教員を早期退職して東京から移住してきました。

奥さまは和歌山県の出身で、大学の時から東京に住み始めました。ご主人は北海道出身ですが、育ったのはほとんど東京とのこと。ご夫妻は大学時代に天文同好会で知り合ったこともあって山が好き。野辺山高原に大学の観測所があり、信州とはその頃からの縁。特に北アルプスには、東京で生活していた頃からよく登山のために訪れていたそうです。

移住の動機は、なにより「登山が好き」だから

移住したのはご主人が54歳の時。

仕事をやめた後は田舎暮らしをしようと思っていました。定年してからかな、と思っていたけど、早期退職して、それから土地探しをしました。その頃は八ヶ岳と決めていたわけではなく、安曇野など、北アルプスが見える場所で探していました。

また「暑いところが苦手なんですよ。東京は暑くて…。」という奥さま。でも、ご夫妻が信州を選んだ一番の理由は、登山が好きで、特に北アルプスに登る機会が多いため、ここなら北アルプスはもちろん、南アルプスにも行けるからなのだとか。

山梨側でも土地を探してはみたものの、小さい土地が多く条件に合わなかったそうです。ちなみに、ここ原村の土地は300坪ほど。安曇野や美麻村、池田町なども見てまわり、冬の気候のことなども考えて、最終的には八ヶ岳山麓の原村にしよう、と決めました。

原村の場合は、地元の方が住んでいる場所と移住してきた人が住んでいる場所とがハッキリ分かれているので、不動産屋さんもやりやすいと言っていました。
また、実際に周囲に住んでいる方々にもお話を聞いて、ここならいいかな、とこの場所に決断しました。

なるほど、移住者の多いエリアでは、地元の方々だけでなく、移住者同士のコミュニティが生まれているケースも多々ありそうですね。

「冬が一番いい。」という移住後の生活環境

原村に来てから、ヨガ、書道教室、句会、9条の会、などいろいろな会に顔を出している奥さま。

東京と違って狭いですから、いろんな会に顔を出していくとそこから人の繋がりが広がっていくんですよね。目に見えて繋がりが広がっていくのが面白いですね。

田舎暮らしならではの人との繋がりも楽しんでおられるようです。でも、東京暮らしも長いご夫妻ですから、東京へ行く機会も多いそうです。

ここは、本当に便利ですよ。インターチェンジも近いから東京も近い。渋滞しなければ本当に早いですよ。ちょっとラグビー見に行こう、という感じでふらっと東京行けますからね。

実際の距離と、目的地までの所要時間とは必ずしも比例しないわけですから、場所を選ぶ上で所要時間は大切な要素ですよね。
また、移住したことで、ご両親やご親族との関係には変化があったのでしょうか。

両親とももう居ないので、特にないです。

というご主人ですが、一方の奥さまは、

両親とも和歌山にいるので、結構大変です。こっちへ来てから両親の体調が悪くなってしまったので、6時間かけて月に一度のペースで帰ってます。ここから梅田まで高速バスで行って、そこから電車です。

と、移住後に予想しないことが起こることもあります。

新築されたお住まいはいかがですか?

自然素材の家( 設計施工はアトリエDEFさん )に暮らすご夫妻。断熱もしっかりとされている家で、暖房は薪ストーブ。暖かくて基本的に満足しているとのこと。

体調ということで言えば、花粉症がなくなりました。また、木の家に住むようになって、逆に一般的な家の合板の匂いとか空気感の違いなどが、気になるようになりました。だから、お店や、公共施設でちょっと困ることがあります。

知らず知らずのうちに化学物質に囲まれて生活している現代人には、気づきにくいことなのかもしれません。自然素材の家で日々を過ごしているからこそ、の感想ですよね。

季節はいつが一番好きですか?

夏は人がたくさん来るので忙しすぎるんですよね。冬が一番いいかもしれない。静かだし、鳥が遊びに来たりするのもいい。星も綺麗だし、そして誰もこない。 (笑)

とはいうものの、冬は冬でやはり…

薪ストーブが見たい、と友人が来て、こうしてお茶飲みながらお話してると「のんびりしてていいねぇ」って言われるんですけど、結構忙しいですね。

でも、普通に仕事している人から見たら、その忙しさの中身が想像出来ないかもしれないですね。

こっちだと、突発的な忙しさがありますよね。「パセリあげるよ」と言われればそこからパセリ仕事が始まるし、「渋柿あげるよ」と言われれば、渋柿仕事が始まる。予測不可能なところはあります。先日も白菜を5玉くらいもらって、「こんなに食べられませんよ」と言ったら保存の仕方を教えてくれました。話を聞くと白菜100玉、大根100本とか、そういう単位で保存しておくらしいです。
こういうのは予測していなかったから、土蔵と土間を作っておくべきだったかな、と思ってます。野沢菜漬けや味噌、そういうものを保管しておくのに調度良い場所がないんですよね。家の中だと暖かすぎるし、外だと凍ってしまうので。

生活費を稼ぐ「忙しさ」とは違う忙しさが田舎暮らしにはあります。でも、生きるための活動という意味では、どちらも同じ仕事です。とはいえ、もちろんお金も必要なのも事実です。

どのように生計を立てていますか?

早期退職という選択をしたKさん。冬はスキー場でインストラクターのアルバイトをしたり、エコラ倶楽部で山仕事を手伝ったりもしているご主人ですが、現在のところは、基本的に収入は得ずに今までの貯金で生活しているそうです。出費もあまりないので、贅沢しなければ特に困ることはない、とのこと。

また原村には、女性が定年後に一人暮らしをされているケースも多いのだそう。

女性はたくましいですよね。老後一人だとしても介護施設などもこっちの方が充実していますし。
最近では孤独死も問題になっていますよね…。

人口の多い都市部の方が、孤独になりやすいのかもしれません。「繋がり」が注目されている昨今ですが、深い繋がりは、やはり田舎の方が作りやすいのかもしれませんね。

そして、田舎暮らしをする上では、「自給する」ということも大きな仕事です。

車で30分ほどのところで田んぼ、畑は家のすぐそばでやっています。少ししかやってないですけど、忙しいですね。庭の手入れとか。忙しい理由は土いじりと草刈り(笑)ですかね。

やはり、忙しさのお相手は自然なのです。

その他に、気になったことや気づいたことなど

二人で退職後に都会のマンションで暮らすことを考えると、それは苦しいことだと思うんですよね。まぁ、一戸建ての広い邸宅だったらまた違うのかもしれないけど。ここだと、変な話だけど、一緒に暮らしていても別々の生活が出来てしまう。
東京は移動したり、遊んだり、何をするにもお金がかかるし、マンションだと大してやることもないけど、こっちだとイヤでもやることいっぱいあります。

田舎で自然と共に生きることは、イヤでもやらなければいけないことも出てきます。でも、それは都市で生活している時には気付けなかった「『当たり前の地球の営み』に触れる事」とも言えるのではないでしょうか。
「当たり前だけど新鮮」という感覚は、都市部から移住した人にしか感じられない「発見」なのかもしれません。