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【ヒトノユメ通信】国指定重要文化財登録の「笠原工業常田館製絲場」は、歴史の重みを感じる魅力的な空間

更新: / 公開: 2013年9月19日 ( ※ 古い情報です ) / 文責:

 

今回のヒトノユメ通信は、ヒトノユメ展の舞台となる「笠原工業常田館製絲場」についてご紹介したいと思います。

正直、笠原工業さんの敷地内には、今回ヒトノユメ展の取材で初めて入らせていただきました。さかのぼれば、学生時代、毎日、笠原工業前バス停で降りて中学に通っていたのに、上田駅に向かうときなど何百回となく、その横を通っていたのにです。

そして、そして今回、敷地内に入って、とにかく感動したんです。そこにある建物の荘厳さ、大きさ、歴史の重みに……。創業から110余年を経て、ここにあることの偉大さを感じました。
それもそのはず、笠原工業さんの建物は、国指定重要文化財と上田市指定文化財/経済産業省認定近代化産業遺産に登録されているんです。

五階鉄筋繭倉庫
炊事場
常田館
四階繭倉庫

笠原工業さんは、1900(明治33)年、「常田製絲場」として創業しました。製糸業は、蚕(カイコ)が作った繭から生糸、つまり、絹を作る(養蚕)産業です。上田市は、幕末頃から養蚕業が始まり、明治、大正にかけて発達し、福島県梁川町、京都府綾部市とともに日本の蚕都と呼ばれて、日本の経済を支えてきました。上田の街も多くの人でにぎわっていたそうです。

この間、笠原工業さんも日本の近代化の原動力となって地域の隆盛を支え、工場内には、従業員の衣食住の施設に加え、文化施設や医療施設まで備えていました。
そんな貴重な文化遺産のいくつかが、今でも残っているんです。

【国指定重要文化財】

  • 五階繭倉庫:建築1905(明治38)年
    会場に足を踏み入れて、真っ先に目に飛び込む大きな、漆喰の白壁がまぶしい建物です。ヒトノユメ展のメイン会場の一つになります。
  • 五階繭倉庫:建築1903(明治36)年
  • 五階鉄筋繭倉庫:建築1926(大正14)年
    木造建物の焼失により建て替えられたのですが、結果的に、長野県内に現存する最古の貴重な鉄筋コンクリート造5階建て建築物となっています。メイン会場の一つです。
  • 選繭場:建築1926(大正14)年
  • 常田館/事務所兼住宅:建築1908(明治41)年
  • 文庫蔵:建築1908(明治41)年
  • 四階繭倉庫:建築1912(明治45)年

【上田市指定文化財・経済産業省認定近代化産業遺産】

  • 守衛所/事務所棟/創業者住宅/倉庫/二階繭倉庫/男子風呂場/炊事場/煙突およびボイラー棟
    炊事場は、メイン会場の一つです。

今回のヒトノユメ展は、この会場と白井さん、高橋さんの才能が、どんな化学反応を起こすのかも楽しみの一つです。

その後は、化学繊維の普及や市場の変化により、養蚕業は衰退をしていくのですが、笠原工業さんでも市場の動向を見据えた新事業を始め、現在は、電子部、合成部、AB(アグリビジネス)部、精密加工部を展開しています。そのうちの合成部では、保冷用の発泡スチロールを製造しているのですが、今回のヒトノユメ展での重要な展示物の材料である発泡スチロールを笠原工業さんが作ってくれているそうです。さて、その展示物とは何でしょう?  キーワードは、笠原工業さんのルーツである“繭”、21日からのヒトノユメ展で見つけてくださいね。