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宅幼老所「岩井屋」:野菜がもたらすお年寄りと障害者・児の笑顔(長野県東御市)

更新: / 公開: 2010年11月8日 ( ※ 古い情報です ) / 文責:

 

東御市田中に明治時代から建つ町屋風の古民家があります。ここが、NPO法人・普通の暮らし研究所の宅幼老所「岩井屋」さんです。

年月を経た木の柱の風合いに心和む部屋の中では、数人のお年寄りと知的障害をもった人や子どもたちが、和気あいあいと過ごしていました。
ここでは、介護の必要な高齢者と障害者・児を一緒に通所デイサービスとして受け入れていて、それぞれが自分の役割を見つけ、お互いに助け合いながら、毎日を生き生きと暮らしています。

そして、そんな中で始めたのが「岩井屋農園」。近所の休耕地を借り、農業の経験をもつお年寄りが、若い障害者を指導して野菜を作り、東京などで販売しています。自分の得意分野をうれしそうに話すお年寄り、その指導を受け入れ、パワフルに汗をかく若者、実った新鮮で美味しい野菜を喜ぶ消費者。まさに、そこには普通の暮らしがありました。

それぞれの役割を果たす喜び


ボランティアの高校生と

日課のボール遊び

岩井屋さんにお邪魔すると、お年寄りが、チョコチョコと動き回るお子さんを追いかけながら、お互いが笑顔で過ごしていました。お年寄りはアルツハイマー、お子さんは多動の障害を持っています。

ここでは、お年寄りに障害者・児の相手をしてもらうという組み合わせをとっています。それが、お年寄りには刺激になり、障害者・児も置き去りにされることなく、常に関わってもらっているから楽しい。つまり、お互いが役割を果たしているのです。

先ほどのお年寄りも、スタッフが「もう、○○ちゃん追いかけるの大変だからお願いしますよ~~」なんて頼むと、いつもはボーッと昼寝をしていたのに、しなくなったそうです。重度の障害者のお母さんも「初めて人の役に立った」なんて笑い話をしてくれるそうです。

「私もおばあちゃんには、さんざん迷惑をかけました。お金をせびったり、買い物に行かせたり。でも、そのおかげで長生きできたとおばあちゃん言ってました(笑)。大事にされ、何もしなくていいよとなると、かえって、お年寄りは元気をなくすんですよね」と代表の岩井さん。

野菜がもたらす笑顔&100%りんごジュースが評判の「岩井屋農園」

午前10時、60歳代のピック病の方が来所してきました。彼は、家の中には入らず、玄関で農作業の準備をし、即、裏にある畑へ向かいます。「△△さん、良いホウレンソウを作ってくれるんですよ!」と岩井さん。

岩井屋さんでは、このような農業知識のあるお年寄りが指導をし、若い障害のある方が作業をして農産物を作り、販売しています。それが「岩井屋農園」(就労継続支援A・B型)。お年寄りも、自分の得意分野だから、うれしくて張り切っちゃうし、障害者も自分ができること、好きなことを見つけてパワフルに汗をかいています。土や水に触れられる畑が、みんな大好きなようです。

そして、年に数回、東京の三軒茶屋で空店舗を借りて、収穫した野菜を販売しています。葉っぱや土の付いた野菜を消費者の方は、とても喜んでくれ、その笑顔を見て、販売をしている障害者も笑顔になります。東京での販売は、岩井屋の皆さんに、とても大きな希望をもたらしているのです。現在は、地元の「道の駅・雷電くるみの里」や農協でも販売しています。

また、東御市は、雨が少なく日照時間が長い、昼夜の寒暖差が大きい、粘土質の土壌など、美味しい農産物が育つ条件がそろっています。
そんな東御市のふじりんご100%の岩井屋農園「信州りんごジュース」(800円)が評判です。太陽の光をいっぱいに受け、蜜がたくさん入った、そのまま食べても、すっごく美味しいりんごを、惜しげもなくジュースにしていますから、コクと甘味が半端ではありません。
また、清涼な水と粘土質の大地で育った粘りのある東御市産の「お米とりんごのセット」(2,100円)も、贈答品などに好評です。

障害者が自立できる環境を整える


元気まつりの司会・牛山アナを訪ねて

お相撲さんとパチリ!

2010年9月25日、岩井屋さんが主催する「たなか元気まつり」が、田中商店街一帯で開催されました(現在は開催されていません)。街の人たちも、町外の人も、障害者も、子どもたちも、皆が一緒に楽しめるイベントをしようということで、昨年から始められたもので、ミニSL運行や移動動物園、バンド演奏、大道芸、野菜や飲食の販売など、にぎやかな1日でした。

「今年は、商店街の皆さんがスタンプラリーに協力してくれるなど、元気まつりや障害者に対するご理解をいただき、本当にありがたく、うれしく思っています」と岩井さん。

高齢者や障害者が共に暮らす元気な街づくりが確実に進んでいるようです。

岩井屋さんでは、この4月から山に出かけていって山菜を採取してくる山菜班を発足し、前述の野菜の栽培・販売に加えて収入を増やそうとしています。さらに、建築廃材や端材などを原料とする木質チップを堆積したときに発生する発酵熱を利用してビニールハウスを暖め、旬の時期以外にも野菜を作るという計画もあります。

そんないろいろな工夫をしながら、年間を通して収入を得る道を確保し、障害者が自立できる環境を整えようと奮闘しているのです。

お店からのヒトコト

岩井屋の活動を通じて、お年寄りや障害者・児、一人一人が自分らしく、誇りや生きがいをもって日々を送るお手伝いをしたいと思っています。

岩井屋は、田中駅に近い商店街にあります。買い物や銀行、レストランカフェ、床屋さんなど、みんな、どんどん外に出て、街の中にとけこんでもらいたいですね。街の皆さんにも、彼らと関わっていただきたいと思っています。そして、もし、ご迷惑なことがあったら注意してもらいたいのです。障害者だからといって遠慮することはありません。それが、当たり前なのですから。

彼らを含めた様々な人たちが、共に笑顔で生きる社会、それが「普通の暮らし」なのかもしれません。

副理事長・岩井孝司

webサイト http://www.iwaiya.org/
電話番号 0268-64-1439
住所 長野県東御市田中220
事業内容 介護保険通所介護/生活介護・機能訓練児童デイ(基準該当)/
障害者自立支援 就労継続支援A・B型/自由保育/緊急宿泊/一時預り